ちんぬくじゅうしい
えっちゃんがかなんを抱いて、ふと唄いはじめる。
歌詞につまると娘が歌い、それでもだめならばーちゃんが助け舟。
「なつかしいね、これなんかも、みんなこうして大きくなったよ」
かなん一家がえっちゃん家の夕飯にまねかれた今日、
上等な味になった牛そばの向こうで、子守するのもえっちゃん。
新米ママ、がんばれよー!ということでしょう。
島の子守唄といえば「あがろうざ」か「月ぬ美しや」だろうけど、
今宵は「ちんぬくじゅうしい」。
もともと島にあった古い子守唄ではなく、
僕が生まれた頃にフォーシスターズが唄ったという流行り歌です。
よく耳にするとってもいい曲だけれど、
沖縄の言葉や文化がわからない僕には、ずっと意味わからん歌でした。
白髪のお家という屋号を持つこの家で、歌い継がれてきた歌。
6ケ月になるかなんの心には、どう届いたのでしょう?
カツオ工場のざわめき、フクギ並木のにおい、
じーちゃんが魚をとった白浜、三人の少女が渡る青い海・・・
そういうものをつたない想像力で思い描きながら、
ばーちゃんの解説をもとに、僕なりに訳してみました。
よろしければ、どうぞ。
ちんぬくじゅうしい(歌意)
「母ちゃん 薪が煙たいよ
煙くて煙くて もう涙ぼろぼろや」
「よーしよーし 泣くなよー
今日の夕飯何かわかるかい?
ごちそうの芋雑炊だよ」
父ちゃん 畑から戻ったよ
今日の収穫は冬瓜に南瓜 島ニンジン
粉吹芋が煮えてるよ
豆腐をつくる挽き臼が廻ってるよ
豆腐汁だよ たんとおかわりしようね
じいちゃんのカゴは 荒いカゴだよ
シュロ皮 藁敷 吊りカゴ
やわらかいお米からめしあがれ
じいちゃんの白髪は 生きてきた年月に磨かれて美しいぞ
米寿のお祝い盛大にしようね
三良(任意の人名)が 魂落としたって
前田の婆さんが(魂込め)拝んでいるよ
神さまにお供えする花米一粒に島酒一杯
三本線香(半分のお線香)と島の塩
トートゥトートゥ アートートゥ(拝み言葉)
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