島の時間 bｅ

旅人の僕が八重山に来るようになった直接のきっかけは、黒島でした。
海と人の島、黒島。
その名物のひとつが、島から消えた気がします。
口数はすくないけれど、独特のはにかみ笑いをうかべながら、
庭のすみで飲んで、器用に縁台で眠る人。
島に住んで三十数年、島人から愛され、旅人から慕われた人でした。
ちょっとはやすぎるんじゃないの・・・という思いをこらえ、
ただありがとうと言うのがやっとでした。



会の後、旅人達が送ってくれたたくさんの写真を見ながら、
故人のお母様やお兄様から、お話をうかがいました。
親兄弟に相談もせず会社を辞めて黒島に住民票をうつしてしまったこと、
手紙はおろかめったに電話もしてこない人だったこと、
そのくせ阪神大震災のときは直後に飛んで見舞いに来たこと、
昨秋、うれしそうに島を案内してくれたこと・・・
「ここでまっとうできて本望やったでしょう、ほら、こんなに笑ろてます」
一枚一枚大事そうに眺めながら、お母様は言われました。



「さびしいけど、みんなの心の中にはいるからさ」
電話口で、イワさんが言いました。
「島に行ったらさ、また会えると思うよ」
昨日、またひとつ黒島が好きになりました。
あなたが連れて行ってくれた海を、あなたと飲んだ酒を、忘れません。



マサミ、オーバさん、おっきーほか、たくさんの旅人から連絡をもらいました。
考えた末、この記事をあげることにしました。
今夜、島では故人をしのぶ会がなされているはずです。
僕達は、また島で一緒に飲みましょう。
あの人が好きだったたのしいお酒を！