島の時間 bｅ

「おまえ、どっから来たか？」
子供達の問いかけに、やつはしっぽを振るばかり。
「このこ、迷子なんだ・・・」
生後半年ぐらい。人なつっこいし、しつけもきちんとできているので、
どこかのお家で飼われていた犬のようです。
「こいつ、かわいいね」
「でも、困ったな・・・どこの犬かわからないんじゃ・・・」
「このままじゃ保健所にもってかれちゃうよ・・・」
「うちもアパートだから飼えないしなぁ・・・」
通りがかった近所の人々も足を止め、みんなで腕組み。
こうしている間にも、飼い主は必死でさがしているに違いありません。
運よく再会できることをただ祈るばかりです。



しばらくの間、やつは僕についてきました。
お家へかえれよ、お家へかえれよ・・・
つぶやきながら、どうすることもできない自分がいました。
たまらず走り出したとき、ぽつぽつ降ってきた雨。
せめてやつが濡れなければいいのにと、ちいさな僕は思いました。