島の時間 bｅ

僕を敵視して吠えていたお母さん犬やお姉さん犬も、
今では、僕が通りかかると尻尾をふって出迎え、
｢あの子らはもういないよ｣と、瞳でつぶやきます。
抜け殻のようになっていないかな・・・と心配になります。
実際、僕もちょっと淋しかったですから。

僕には今月で三歳になる相棒の犬がいます。
犬嫌いだった僕とドリとの間には、今日まで実にいろんなことがありました。
出会ったときは手のひらに乗るくらい、生後三ケ月。
けれど、それ以前のことは、何も知りません。
どんなところで生まれて、兄弟たちはどんなで、
どうやって僕らのところへやってきたのか・・・
時々ふと思う自分たちの物語の空白を埋めたくて、
僕はさとうきび畑の仔犬たちを見てきたのかもしれません。
生まれた命が生きてゆくには、いくつもの奇跡が必要なんだと知りました。
あらためてありがとうを言いたい気持ちです。

最初はシャッターを押すのもこわごわでしたが、いつしか懐いて、
とにかくペロペロされて写真どころではなくなっていました（笑）
僕の車の音がすると飛び出してきて、何度も肝をひやしました。
たのしい月日でしたが、僕のことは忘れてほしいと思います。
ひとりひとり、新しい環境で幸せになってほしいと願います。
この島のどこかで、元気に大きくなっているのを想像しながら、
僕も相棒を大事にしてゆきたいと思います。

どんな夢シリーズは、これにておしまいです。
ご覧いただいたみなさま、ありがとうございました。
この世界でめぐりあった奇跡を大切にして、今日からまた！